虚夢
2018年 03月 17日
通り魔事件によって娘の命は奪われた。だが犯人は「心神喪失」状態であったとされ、罪に問われることはなかった。心に大きな傷を負った男は妻とも別れてしまう。そして事件から4年、元妻から突然、「あの男」を街で見たと告げられる。娘を殺めた男に近づこうとするが……。
人の心の脆さと強さに踏み込んだ感動作。
宮下奈都さんのほっこりした本を挟んで、重たいこの本に・・・
無差別殺人によって娘を殺され、家族がバラバラになり、ニュースでは終わった事件でも彼等の中には殺された時よりも重たくなっていく。
人を殺しても病気があれば、ある程度で街を歩けるようになる犯人。
その判決や今のそれに納得できないまま彼等は毎日を過ごしていく。
結局夫婦は離婚。
でも、その中で主人公である元夫は、元妻の行動もおかしくなって来て、自分ではどうにもならない精神障碍者に多少理解をしめし始めるが、被害者と加害者の中で説明のできない心の揺れが起こってくる。
私ももし、大事な人が殺されて、彼らが精神障害で罪に問われず、短い間に釈放されたらっと思うと大胆なことは言えないし、そうされたことが無いので安易に言えないけれど、私たちは運よく普通に物事が考えられるように生まれてきた。自分に罪がなく生まれながらにそのような病気で生まれて来てしまった場合、本人に罪を問えるのか。しかし、だからといっていつまた無差別を起こすかもしれない彼等を安易に釈放してもいいのか。
でも、彼らと同じ病気を持つ人たちがすべて同じ行動をとるのか・・・
普通に生まれてきた人だって、優しい人もいれば意地悪な人もいる、不倫する人もいれば、泥棒もいる、いじめをする人もいる、パワハラをする人もいる。
少しそんなことも思ってしまった。
恋愛本は、最後はゴールインしたり、もめてもめても海外赴任して別れたり、
案外結末は簡単だったりするけれど、この本はどうやって終わるのだろうとワクワクして読みました。
ラストは・・・・
思いもよらなかった結末です。
でも、内容はすごいですが、少しほっとしたというか、安堵したような気もします。
主人公も妻も、犯人に寄り添った若い女の子も・・・
悲しいけれど、救われたような気がしました。
重たい本でした。
by m3824
| 2018-03-17 10:11
| 本・CD